【コラム】「友達がほしい」と思ったときに、私がやってみたこと

コミュニケーション

私はずっと、家族以外の人とあまり話せない生活をしていました。

でも、あるときふと「友達がほしい」と強く思うようになったんです。

おしゃべりしたり、一緒に遊んだり、そんな関係がほしい。

「人とのつながり」が増えたら、何かが変わるかもしれない。そう思いました。

でも、私は今、学校にも行っていません。

いったいどこで人と出会えばいいんだろう?

交流の場ってどこにあるんだろう?

ネットで検索したり、人に聞いたりして、いくつかの選択肢を見つけました。

 

初めての交流の場、「障害福祉事業所」へ

最初に通い始めたのは、障害福祉事業所でした。

けれど、初日は本当にしんどかった。

誰からも話しかけられず、周りは内輪の話で盛り上がっていて、話している内容すらよく分からない。

あの空間に居場所を感じられませんでした。

それでも、私は通い続けることにしました。

理由は、スタッフさんが言ってくれた「この場では失敗しても大丈夫」という言葉。

失敗してもいい場所って、意外と少ないと思うんです。

毎日のように通える交流の場も限られているので、思いきって「続けてみよう」と決めました。

 

数か月後、私はスタッフさんとは自然に話せるようになりました。

スタッフさんから「前より明るくなったね」と言われることもあり、自分でも少しずつ変化している実感がありました。

利用者さんたちとはまだそこまで打ち解けていませんでしたが、会話を聞いているだけでも面白く、前ほど緊張しなくなりました。

 

友達作りへの別ルートを探す

「事業所には通えている。でも、まだ友達はできてない」

そう思って、次に試したのは「友達が作れる」と書かれていたマッチングアプリ。

でも、ここではうまくいきませんでした。

プロフィールに「恋愛は求めていません、友達作りが目的です」と書いたのに、届くメッセージは下心のある内容ばかり。

「これは違う」と感じて、すぐに利用をやめました。

そこで、地域の掲示板サービス「ジモティー」を利用してみることにしました。

「○○市周辺で遊べる同性の友達がほしい」と投稿してみたところ、思ったよりも多くのメッセージが届きました。

その中に「Aさん」という、気が合いそうな方がいました。

最初は通話でお話しし、その後、実際に会って一緒に美術館や公園を歩いたりしながら会話をしました。

 

「雑談力」の本から学んだ、基本中の基本

Aさんと話したあと、私は「なんだかうまく話せなかったな」と感じていました。

もっとちゃんと会話を続けられるようになりたい。そう思って調べていたときに見つけたのが、「雑談力」について書かれた本でした。

読んでみて、衝撃を受けました。

私は、会話のなかで「質問する」という基本的なことができていなかったんです。

思い返せば、Aさんとのやりとりも、相手からの質問に答えてばかりで、自分から質問を返していなかった。

自分では「まあまあ話せた」と思っていたけれど、それは相手が会話をリードしてくれていただけだった。

このことに気づいたとき、ショックを受けました。

しかし、「次から意識すればいいんだ」と思い直せました。

 

通話

そこで再び、ジモティーを使って「通話だけの友達」を募集してみました。

住んでいる場所が離れていても、話してみたい人とつながれるかもしれない。そう思ったからです。

何人かとやりとりする中で、「Bさん」という方と通話することに。

趣味も近くて、話しやすそうな人でした。

そして実際に話してみたら、前よりもずっとスムーズに会話ができたんです。

本で学んだ「質問する」「話題を広げる」といったことを意識してみた結果、1時間近く話し込んでしまいました。

ときどき無言の時間ができてしまうのが課題だけれど、それでも「楽しい」と思えるようになっていました。

 

Aさんとの再会、そしてちょっとした驚き

その後、Aさんと再び会う機会がありました。

以前よりも楽しく、リラックスしてお話しすることができました。

「友達になれたかもしれない」と思えた瞬間でした。

そして、その日の帰り道、私は思い切ってAさんに聞いてみました。

「前に会ったとき、私、うまく話せてなかったよね?」

すると、Aさんは驚いたようにこう言ってくれました。

「えっ、そう思ってたの? 私は○○ちゃんが質問に丁寧に答えてくれて、話しやすいなって思ってたよ」と。

私はそれを聞いて、とてもびっくりしました。

自分では「失敗だった」と思っていたやりとりも、相手にとってはそんなふうに映っていなかった。

そのことに気づいたとき、少し肩の力が抜けたような気がしました。

 

今の私のこと

あれから数年たった今も、私はあの障害福祉事業所に通い続けています。

少しずつですが、利用者さんたちの会話の輪に自分から入れるようになってきました。

全員と仲良くなったわけではないけれど、たまに一緒にゲームをしたり、お茶をしたりする人ができたのは嬉しいことです。

困ったことがあったときに相談できるスタッフさんの存在も、とても大きいです。

信頼できる人が近くにいるという安心感は、何ものにも代えがたいものだと思います。

ジモティーで出会ったAさんとは、定期的にLINEのやりとりをしたり、「また遊ぼうね」と話したりしています。

通話相手のBさんとは、今でも週に一度くらい通話しています。

 

振り返り:ここまで歩いてきて思うこと

以前の自分と比べると、コミュニケーション能力は上がってきたと思います。

初対面の人と話すときの緊張も和らいできたし、誰かと話すこと自体を楽しめるようになってきました。

とはいえ、まだ課題もあります。

福祉事業所では、大人数の輪の中に入るのが苦手なままだし、みんなの前で話そうとすると緊張してしまいます。

Bさんとの通話でも、話が途切れて無言になることがあるのが、今の悩みです。

もっと成長したいという気持ちは、今も強く持ち続けています。

 

これまでを振り返って、「何が一番大事だったか?」と考えると、

だめかもと思っても、いい方向に向かう可能性があるなら、続けてみる」という姿勢だったように思います。

最初に行った事業所は「私には向いてないかも」と感じた場所でしたが、通い続けることで居場所になりました。

逆に、「可能性が見えなかったり、心身がしんどすぎる場合は、すぐにやめてもいい」という判断も大切でした。

マッチングアプリは早い段階で自分には合わないと感じて、すぐにやめましたが、それで良かったと今では思っています。

また、「一つの場所でうまくいかなくても、別の場所を探せばいい」という考え方にも助けられました。

事業所、マッチングアプリ、ジモティー…。

いろんな方法で、いろんな形の出会いがあって、それぞれが私の今につながっています。

 

最後に

私は今も「完璧にコミュニケーションができる人」ではありません。

話すことに緊張することはあるし、無言の時間が気になることもあります。

でも、あの頃よりは確かに前に進めた。

そう思えるようになってきました。

このコラムが、かつての私のように「友達がほしい」「誰かと話したい」と感じている誰かにとって、小さなきっかけになれたら嬉しいです。

まだ道の途中だけど、それでも歩き出してよかった。

私はそう、心から思っています。

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